腐食のメカニズム

腐食過程と影響因子

  • カラー鋼板は塗膜を有する分、めっき鋼板よりも耐久性に優れます。
  • カラー鋼板は塗膜種が同じ場合、下地めっきの特性によって耐食性能が異なってきます。
  • カラー鋼板は通常環境では良好な耐食性を示します。
  • カラー鋼板は、太陽光紫外線量や付着海塩量が多く湿潤率の高い環境では、耐久性への影響が大です。紫外線と付着海塩量の多い沖縄では通常環境の2〜3倍も腐食が進行します。このように厳しい環境ではGIよりGLめっきが優れ、GL下地カラー鋼板はさらに有利です。
  • 塗膜の劣化段階で補修塗装することが、カラー鋼板の寿命を長持ちさせます。

カラー鋼板の耐久性(=耐候性、耐食性)

環境要因

紫外線量、強度、湿度、気温、酸・アルカリ濃度、砂などの飛来物の衝突(エロージョン)、雨洗浄有無、有毒ガス 等

成型加工要因

加工度、傾斜度 等

沖縄(塩害地域)暴露結果例

GIでは赤錆が発生している条件で、カラーGLは塗膜劣化段階に留まっています。

注)エコガルは厚めっきにすることで高耐食性となります。

海岸からの距離と海塩粒子飛来量

軒天・軒下錆発生のメカニズム

海岸からの距離とGI、GLめっきの腐食速度調査例

雨がかりする場所

雨がかりしない場所

*高耐食のGL鋼板でも海岸近傍や、雨水が当たらない部位では腐食速度が急増します。

腐食因子物質(塩素イオン)の表面吸着量推移

軒下腐食防止策
雨がかりしない箇所は、定期的な洗浄(ご使用環境により1~4回程度/年)により腐食促進成分を除去すると効果的です。
水洗いで取れない汚れ等は中性洗剤をご使用ください。
(高圧洗浄は塗膜を傷めたり、漏水の原因になるおそれがありますので極力避けてください。)

特殊な条件下での腐食事例

異種金属接触腐食

雪止め金具とカラー鋼板の接触

銅線とカラー鋼板の接触

腐食防止策
塗装鋼板と、異種金属との直接接触を避けて施工してください。絶縁処理を施した金具・付属物のご使用や、異種金属側の塗装も効果的です。
直接接触が避けられない場合、金具や付属物は同種金属(例.亜鉛めっきとアルミめっき、アルミ線)をご使用ください。

防腐・防蟻処理木材との接触による腐食

腐食防止策

主として銅系の防腐防蟻剤を含む木材との長期直接接触を避けてください。

主成分に銅を含む防腐防蟻剤で処理された木材、合板はカラー鋼板を腐食させる懸念があります。
直接接触する部分(軒先、けらば、棟包み、雨押え、降り棟、谷部、目地など)は絶縁用下葺(ルーフィング材またはブチルテープなど)で防錆し、木材・合板との直接接触を避けてください。

長期水濡れ腐食

一般カラー材(板厚 0.6mm)
施工:約10年経過 海岸から約4km

屋根裏への水の浸入、結露等の原因で、長期間水に濡れた状態が続くと数年前後で穴あきに至る場合があります。

腐食防止策
軒先部に断熱材を貼り付けない、疎水性断熱材の採用等
設計・施工時の水侵入防止・結露防止への配慮(P57 結露の項もご参照ください)

切断端部の耐食性について

鋼板を切断した際、鉄地が露出します。ご使用初期段階で、赤錆や亜鉛の犠牲防食作用により白錆(白錆状のシミ)が一次的に発生しますが、経時で安定的な白錆状の保護被膜が鉄地を覆うことで腐食の進行を抑制します。
ご使用開始から、端部に雨や結露による水分の付着が継続すると鋼板オモテ面側を白錆によるシミが発生する場合がございます。特に鋼板切断時のバリが大きい(鉄の露出が多い)、腐食促進物質(海塩粒子や酸性物質、等)を含んだ水分が付着すると、より顕著に発生します。
そういった白錆状のシミが発生した場合には、市販のクリーナーなどで端部以外の箇所を拭き取り除去ください。
鋼板切断時のバリを小さくする処置(シャークリアランスの調整、等)や、端面防錆処理が必要と判断される場合には、後塗装等で鉄地を保護することが推奨されます。また、加工後の構造を、鋼板端面部が外部環境に露出しないような構造(かしめ・折り返し、等)にすることも有効です。

切断面の犠牲防食作用

色調、および上記変化のスピードは、板厚、剪断方法、環境等により変わります。
同一条件(同一環境・同一切断面)であれば、犠牲防食により、板厚が薄いもの、めっき厚の厚いものが有利となります。

①シャー切断における切断のメカニズム

②切断端部の断面観察例(SEM)

③シャー切断端面の状態観察(SEM)例

④シャー切断端面の元素分析(EDX)結果

剪断面は亜鉛比率大(=“めっきのかぶり”)でした。
破断面は鉄成分が顕著。鉄地が露出しています。

【参考】白錆状のシミ:一例(実験例)